前編では、「ほめて伸ばす」の落とし穴についてお話ししました。
では、本当の意味で自己肯定感を育むには、どのような関わり方が大切なのでしょうか。
今回は「ほめる・叱るを超えた関係性づくり」について、具体的にお伝えします。
自己肯定感の正体「過去と今のつながり」
自己肯定感とほめられることは、必ずしも一致しません。
他者からほめられることで得られるのは「他者から称賛を受けた感覚」であり、自己肯定とは異なるものです。
私は自己肯定感を「過去の自分と今の自分のつながり(因果)を認識すること」だと考えています。
他の人と比べて優れている必要はありません。
今がどんな状態であれ、これまでの日々の結果として「今の自分」を受け止めた時、「今の自分を受け入れる」という意味での自己肯定があるのです。
非行少年の多くは、非行を人のせいにばかりしています。
親との関係、先輩との関係…。
環境と自分のつながりは認識していても、過去の自分の選択が、少年院にいる今の自分につながっていることを見落としているのです。
しかし、過去の自分の選択が今の自分につながっていることを認識できると、今の自分が未来の自分をつくることにも気づけます。
そこに前向きな挑戦への火種が生まれるのです。
ほかの子と比較するのではなく、その子自身の「過去」と「今」を見つめることで、ちいさな成長を実感できるのです。
雑談で育む自己理解の力
少年院では、自由時間によく私から「何の勉強してんだ?」「それ何やってんの?」と声をかけていました。
評価のためではなく、その子の取り組みに興味をもっていたからです。
大切にしていたのは、「数学やってるのか。どんな問題?」「おぉ、これ解けたのか!」といった、その子の行動や変化に対する驚きや感動を伝えることです。
「すごいね」という評価ではなく、私が感心し、感動している事実が、自信やモチベーションにつながっていました。
また、こどもの選択や工夫に対しては、「いいね」「それもアリだ」という反応を大切にしています。
これも評価ではなく、その子の考えに対するリスペクトを伝える言葉です。
「私だったらこうするかな」と大人としての意見も伝えますが、最終的な選択は必ず本人に委ねます。
発達に凸凹のあるお子さんの場合、特に「小さな変化をフィードバックする」ことが重要です。
「先週は宿題10分しかやらなかったのに、今日は15分やってたね」といった、その子自身の成長の軌跡を一緒に確認することで、こども自身が「自分は確実に成長している」と実感できるようになります。
まとめ:ほめる・叱るを超えた関係性づくり
自己肯定感を育むために本当に大切なのは、「ほめる」ことでも「叱らない」ことでもありません。
その子自身が自己理解を深め、成長を実感することです。
「ほめなければ」というプレッシャーから解放され、もっと自然で豊かな親子関係を築いていけることを願っています。